2026 FIM世界耐久選手権(EWC)第3戦「コカ・コーラ 鈴鹿8時間耐久ロードレース」が今年も鈴鹿サーキットで開催されました。
Kaedear Racing Team 横浜は、フランスを拠点に世界耐久選手権を戦うRAC41と2年目となるタッグを組み、「Dafy-Kaedear-RAC41-Honda」として参戦。ライダーは石塚健選手、Diego Poncet選手、Kevin Manfredi選手。日本、フランス、イタリアという異なるバックグラウンドを持つ3名のライダーに加え、日本とフランス双方のスタッフ、メカニック、エンジニアが一つのピットへ集結。国境を越えたプロジェクトとして挑む鈴鹿8耐は私たちにとって、世界耐久選手権後半戦の流れを左右する重要な一戦となります。

レースウィークの始まりは、レース1週間前の日曜日からスタート。ピット、サインエリア、ホスピタリティ、チームスイートなど、日本とフランス双方のスタッフが協力しながら設営をおこないます。普段は離れた国で活動しているスタッフ同士も、この期間を通して少しずつ呼吸を合わせ、日仏合同チームとしての一体感を高めていきました。

そしてフリープラクティス初日、2日目。いずれのセッションでもSSTクラス3番手タイムを記録し、マシンは非常に高いポテンシャルを発揮。石塚選手、Diego選手、Kevin選手の3名は順番にマシンへ乗り込み、それぞれのフィーリングを確認していきました。
耐久レースでは、一人のライダーだけが速くても勝つことはできません。ライダー3人全員が同じマシンを駆り、コンスタントに速く走れることが重要となります。そのためブレーキング時の安定感や立ち上がりでのトラクション、燃料の量の変化による車体バランスやタイヤの摩耗によるフィーリングの変化、電子制御介入のタイミングなど、ライダーから伝えられる細かなフィードバックを、日本とフランスのエンジニアが共有しながら、決勝へ向けたセットアップを煮詰めていきました。

そして迎えた木曜日。午前中に設定された2時間のフリープラクティスを経て、午後はいよいよ公式予選というスケジュールです。そんな朝のフリープラクティススタート直後から、41号車に異変が起きました。ブレーキング中にマシンが大きく乱れ、本来とは明らかに異なる挙動を示したのです。ライダーはすぐに異変を察知しピットイン。前日までセッティング変更を行っていなかったこともあり、スタッフは原因究明に追われ、ピットは大混乱。サスペンション、車体各部、データロガーなど、考えられる要因を一つずつ確認していくも、短時間で原因を特定することはできませんでした。そこでチームは予備車からサスペンションをはじめとする主要パーツを移植し、レースベースマシンを予選に間に合わせる事を決断。メカニックたちは限られた時間の中で懸命に作業を続け、何とか出走できる状態までマシンを復旧します。しかし、中古タイヤで最終確認に出た石塚選手が、ハイスピードコーナーで激しいハイサイドに見舞われ転倒。幸い大きな怪我はなかったものの、順調だったレースウィークの流れは、この瞬間に大きく変わってしまいます。

その影響もあり、予選1回目はマシンの状態確認を優先する戦略を選択。しかし、アタックに入ったDiego選手が計測1周目で転倒しノータイム。予備車も大きなダメージを負うこととなりました。

残された予選2回目。温存していたレース用マシンで挑むしかない状況となり、石塚選手はマシンの状態を確認しながら周回を重ねて予選終了。Diego選手も同様に周回を重ね、マシンが問題なく走る事を確認すると、Kevin選手がチームベストとなる2分6秒台を記録。苦しい状況の中でも速さを証明し、決勝へ向けて好調な流れを呼び戻してくれました。予選結果は総合25位、SSTクラス5位となります。

雨がすべてを変えた決勝レース
迎えた決勝日。朝から鈴鹿サーキットには雨が降り注ぎ、路面は完全なフルウエットコンディション。8時間という長丁場に加え、視界の悪さや刻一刻と変化する路面状況が、ライダーに苦戦を強いるレースとなりました。
決勝前最後の走行となるウォームアップ時も、コース上には至るところで川が流れる危険な状況で、転倒者が続出。Kevin選手も、その水の流れにリアタイヤをすくわれる形で転倒を喫してしまいます。幸いライダーに大きなダメージはなく、マシンも迅速にピットイン。限られた時間の中でメカニックたちは素早く損傷箇所を確認し、決勝スタートに間に合わせるべく修復作業を開始します。慌ただしい空気が流れるピットの中でも、それぞれが自分の役割を理解し、冷静に作業を進めていく姿は、長年世界耐久選手権を戦ってきたRAC41とKaedear Racing Team 横浜の強みでもあります。

そして決勝がスタート。スタートライダーのKevin選手は、難しいコンディションをものともせず、オープニングラップから果敢な走りを披露。視界が悪く、水しぶきが舞う中でも着実にポジションを上げ、SSTクラストップを快走。さらにダブルスティントを安定したペースで走り切り、トップを死守したままDiego選手へとマシンを繋ぎました。
性能差がほとんどないSSTクラスにおいて、雨の鈴鹿でライバルを抑えながらトップを走り続けることは、決して簡単なことではありません。Kevin選手の力強い走りは、41号車が今大会で十分に優勝を狙えるポテンシャルを持っていることを証明してくれました。

バトンを受けたDiego選手も、その流れを切らすことなく世界耐久選手権で培った経験を生かし、安定したラップを重ねながらトップ争いを展開。ライバルとの差を見極めながら冷静にレースを進め、チームは理想的なレース運びを見せていました。
しかしスティント終盤、最終コーナーでDiego選手が転倒。幸いマシンは自走でピットへ戻る事ができ、ピットではメカニックが一斉にマシンの損傷箇所の確認と修復作業を開始しました。外装を外し、各部をチェックしながら必要な部品を交換。チーム全員が息を合わせ、約10分という短時間で再びコースへ送り出すことに成功します。
ライダーは石塚選手。優勝争いを続けるために、一秒でも早くコースへ戻った41号車でしたが、転倒の影響とみられるシフタートラブルが発生し、再びピットインを余儀なくされます。ここで大きくタイムを失い、トップ争いから脱落。それでもチームは最後まで諦めず、マシンの状態を確認しながらライダー交代を続け、一つひとつポジションを取り戻していきました。
しかし、さらにピットロード速度違反によるライドスルーペナルティも科されるなど、アクシデントが続きます。それでも3人のライダーは集中力を切らさず、スタッフも完璧なピットワークで応え、着実に順位を回復。気付けばSSTクラス7位までポジションを戻すことができました。

そして残り約40分のところでライダー交代。最後のスティントを任されたのは石塚選手。ここからさらに順位を上げるべくコースへ飛び出した石塚選手でしたが、その直後、豪雨による著しい視界不良のためセーフティカーが介入。コースコンディションの回復が見込めないまま、レースはセーフティカー先導で周回を重ねることとなり、そのまま8時間の戦いはチェッカーとなりました。周回数は173周。今回の鈴鹿8耐は、改めて「チームで戦う競技」であることを強く実感する一戦となりました。

ランキング3位で迎える最終戦
鈴鹿8耐で獲得したポイントにより、Dafy-Kaedear-RAC41-HondaはFIM Endurance World Cup SSTクラス年間ランキング3位を維持。首位との差は広がったものの、2位との差はわずか1ポイントで、最終戦ボルドールでは、ランキング2位を懸けた激しい戦いが待っています。
今大会も、現地で熱い声援を送ってくださった皆さま、ライブ配信やSNSを通じて応援してくださった皆さま、クラウドファンディング支援者さま、そして日頃からチームを支えてくださるスポンサー・パートナー企業の皆さま、本当にありがとうございました。雨の中でもピットウォークへ足を運び、声を掛けてくださったファンの皆さまの存在は、ライダーだけでなく、スタッフ全員の大きな力となりました。思い描いていた結果には届きませんでしたが、私たちは今回のレースで「世界のトップと戦える」という確かな手応えを得ることができました。鈴鹿で経験したすべてを糧に、Dafy-Kaedear-RAC41-Hondaはさらに成長し、シーズン最終戦となるボルドール24時間耐久レースへ挑みます。Kaedear Racing Team 横浜は、横浜から世界へ挑戦するチームとして、一歩ずつ着実に前へ進み続けます。
引き続き、Dafy-Kaedear-RAC41-Hondaへの温かいご声援をよろしくお願いいたします。


